対話をひらき、チーム理解につながるアートワークショップの可能性
制作と対話を交えた、体験としてのアートワークショップ
ファーストライト・キャピタルは「事業家による起業家のための100年VC」を掲げるベンチャーキャピタルです。2024年、社名変更とオフィス移転に伴い「会社のアイデンティティになるようなアート作品を飾りたい」と、The Artsceneにオフィスアートを依頼しました。
今回のワークショップを導入した時期は、2025年1月。大型ファンドの立ち上げ、地域課題解決DXコンソーシアム設立、社名変更、オフィス移転などさまざまなプロジェクトを実施した直後のタイミングでした。
導入の背景には、「オフィスにアートを飾るだけでなく、社員がアートに触れ、チームでの対話を通じて新たな視点を得られる場を作りたい」「プロジェクトに向かって走り続けてきたので、リフレッシュするきっかけが欲しい」という思いがありました。
現状の課題をヒアリングした上で、「色になれる」「非言語での関わりを言語化する」をテーマにしたワークショップを企画しました。
私たちは、アート作品のオフィス設置に留まらず、企業の文化や価値観が反映された「体験」としてのアートを提供することを大切にしています。
制作と対話を交えたワークショップは、ファーストライト・キャピタルが大切にする価値観を体感し、チームに対する信頼・安心感を高めるための試みでもありました。
色になれる—直感で色と遊ぶ、自分との対話
ワークショップの前半では、参加者が色そのものと向き合う時間を設けました。
直感で、好きな色を選ぶ。目の前にある100色以上の絵の具から色を選び、パレットにのせていきます。
「何色選べばいいですか?」「パレットに出す絵の具の量はどれくらいがいいですか?」との質問には、自分の感覚におまかせします、とお答え。
参加者は選んだ色をもとに、筆を使い自らの感覚に委ねて色を丸いキャンバスへと広げていきます。
普段、ロジックで物事を考えることが多いため、この「考えずに感じる」プロセスは新鮮な体験だったようです。制作中は、没頭する真剣な表情がみられました。
「自分が何を描いているのかよくわからないけれど、不思議と手が動いていく」
そんな声が聞こえてきました。
作品を完成した後は、グループに分かれて対話の時間です。
観察する—感じたことを共有する—感想を話す、のサイクルを一人ひとりの作品に対して行いました。
感じたことは人それぞれ。
絵に描かれたものが何に見えるかを共有したり、どういう意図で描かれたのか、何色から描いたのかを推測したり。今どういう気分で人生でどういう状態なのか、を絵から読み取った参加者もいました。
「自分でも気づかなかった、自分の特性に気づくことができた」
「絵を通じたフィードバックをもらって、嬉しかった」
このプロセスを通じて、直感的な発想を育み、自己理解を深める機会にもなりました。
非言語での関わり、を言語化—チームで作り、対話する
ワークショップの後半では、関わりで描くこと——絵をチーム全体で回しながら描くプロセスを取り入れました。
真っ白のキャンバスに、色を入れる。そこからキャンバスは自分の手元を離れ、チームに委ねていきます。
「描いた人のことを思い浮かべながら、絵に描き加えてください」
時には、道具を使って作品に動きを加えます。絵の具を散らばらせ、色を薄める。また、作品同士を何度か重ね合わせ、変化を生み出していきます。
キャンバスにはチームひとりひとりの手が加えられ、自分の手元に戻った時には、当初予想もつかないような絵になっていました。
最後に、納得いくまで自分の絵に手を加えて作品を完成させていきます。
作品が完成した後は、チームで対話する時間を設けました。
「描かれた絵にその人の本質がある」と見立て、絵を観察しながら、描いた人にニーズカード(価値観・感情を言葉にしたもの)を渡していきます。
描いた人は、渡されたカードの中から気になった言葉があれば質問をして、その言葉を受け取ったことについて感想を共有します。
なぜ、そのカードを選んだのか。この絵のどこから、その感情を感じたのか。渡されたカードで、自分でも意外な気づきはあったか。
「情熱・冒険」「よろこび」「誠実さ」「居場所」「支え・支援」——
選ばれた言葉はさまざまですが、絵から感じられる価値観や感情は、その人のあり方を形取るものになっています。
このプロセスは、ファーストライト・キャピタルが掲げる「多様性」「オープンマインド」の価値観とも深く繋がっています。組織の一員として、自分の役割やチームとの関係性を再定義するきっかけにもなりました。
「心理的安全性が高まった」—企業がアートを体験する価値
最後に、ワークショップを終えて、全員で感じたことや気づきを共有しました。
「絵や色を通じて会話することで、言葉だけで伝えるよりも相手に伝わりやすく感じた」
「自己理解、他己理解が深まり、心理的安全性が高まった」
「絵を描くプロセスや対話を通じて、自分やチームの特徴を認識できた」
「最初に自分で描いた絵と、チームで描いた絵のテイストが最終的に似ているのが印象的だった」
「没頭できて、あっという間だった」
気づきを語る参加者の表情は、開始前とはまったく違うもの。
単なるアート制作の場ではなく、メンバーが新たな形で関わり合い、自分たちの価値観を見つめ直す時間になったことが伝わってきました。
ワークショップ終了後の集合写真。参加者が制作した作品と共に
ファーストライト・キャピタルのオフィスアート導入をきっかけに企画された本ワークショップ。
オフィスアートを単なる飾りで終わらせるのではなく、ワークショップとともに「体験」することで、チームの相互理解を深め、価値を創造しています。
アートワークショップやオフィスアート導入にご興味のある企業さまへ
ワークショップで生まれた作品や気づきは、その場限りのものではありません。参加したメンバーの自己理解やチーム理解が深まり、心理的安全性が高まることで、企業でさらなる価値創造に向けた動きができるでしょう。
またオフィスにアートを導入することは、創造的なコミュニケーションを促し、企業文化に変化をもたらすきっかけにもなります。
このような体験を、あなたの会社でも取り入れてみませんか?
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